GM6月 湯浅美代子「自然薯」

mitake Posted in 文章教室
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自然薯と言っても、町に出回っている自然薯はほとんどが販売用に形も色目も整えられていて、当然調理はしやすくただし特徴である粘りは弱いか、、。手が痒くなるあの粘りが、、。

自然薯は土深くまで延びていて、掘り出すのは容易でないと農業を営む叔父から聞いていた。その叔父は自然薯取りの名人で、とれたての物をよく送ってくれた。

その自然薯を使ったトロロ汁、私は醤油のだし汁を使って作っていて、家族がそろっての食事の折に出すと、鉢いっぱいに作ってもあっという間に空になってしまったものだ。

先日孫が日本を離れて嫁ぐことになり、親戚で記念の旅行に出かけることになった。総勢八名、静岡に集合し日本平へ向かった。昼食を丸子のとろろ汁と決め、自動車に分乗し菜の花の咲く野辺や、桜の咲く川べりの道を抜けて山腹の丸子へと向かった。

昔は五十三次の道を歩いて来て、これから津谷峠を前に精をつける為とろろ汁を食したという謂れがあり、百年は経っているという大きな茅葺屋根の畳敷きの部屋は満員だった。我々は奥の部屋に通され、待っている間周囲を眺めると、江戸時代に使われたという古いすり鉢や看板等が飾られていた。

やがて各々のすり鉢に入ったとろろ汁、香の物、麦飯のお櫃が運ばれてきた。この店はまさに自然薯を使っているので、粘りが強くコクがあり、出汁は何かしらと伺うと味噌を使っているという。そういえば昔父が、出汁は味噌を入れたほうがいいと言っていた。この店の味を覚えておいて、今度自分が作るときは味噌を試してみようと思う。

 

寸評 私も丸子のトロ汁を戴きました。実は私も醤油でだしを取っていましたが、丸子のトロ汁を戴いてからは、時折は味噌出汁で戴いたりもします。なんだかトロ汁が食べたくなりました。